校長ブログ
ドラフト会議と高校生
今年もNPBのドラフト会議が行われて、アマチュア球界のトップ選手がプロの世界へ進む切符を手に入れた。僕は一人の野球ファンとして毎年このイベントを楽しみにしているのだが、今年は心持ちが全然違った。なぜかと言うと、本校生徒がその有力候補となっていたからである!まだ未完成ながらも長身から投げ下ろすストレートは150km/hを超え、今夏の選手権大会でも多くのスカウトが視察に来ていたのだ。
ドラフト会議当日は、夕方から講堂に150名ほどの生徒、教員が集まり、中央のスクリーンに映し出される会議の模様を見守った。中継では、一位指名でひとしきり盛り上がったあとは時間とともに淡々と指名が進んだ。さすがに5巡目ぐらいまで指名がないと僕のような立場でも不安が募ってくる。その後「選択終了」という球団が続き、結局最後まで指名はなかった…
プロの世界は本当に厳しい!と言うか、指名された選手は良いが、されなかった選手、特に高校生にとってはこんなに酷なことはない。それまで多くのスカウトから声をかけられ、メディアの取材もあり、もちろん指名の確約などあるはずもないのだが、高校生ぐらいであればその気になってもおかしくないはずだ。それが一気に落とされる…。
会議終了後、校長室で野球部の監督とともに本人と話したが、その時の本人の落ち込み様は相当なもので、最初に何と言葉をかけて良いのか本当に悩んだ。僕が彼の立場だったら、大人社会に対する不信感でいっぱいになると思う。
それでも、校長室でしばらく話しているうちに監督からの力強い励ましの言葉もあって「大学で頑張って、4年後にはドラフト1位で指名されるような選手になります!」と前を向くことができたようだ。こんな経験を高校生の段階でするというのは本当に酷なことだと思うのだが、逆に言うと、それを乗り越えて次に踏み出すことができるのであれば、これほど貴重な経験もないのかもしれない。大人社会の厳しい部分を高校生の時に知ったことで、その経験を糧にその後の人生を力強く歩んでほしいものだ。